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10話 彼の記憶と、妹の空白

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-09-05 16:00:22

 リビングに降りて、ユアにスマホを見せてもらうことにした。どうしても、昨夜のことが夢ではなかったと確かめたかった。

「昨日、電話したよな?履歴って見せて?」

 俺の言葉に、ユアは首を傾げ、記憶を探るように小首を傾げた。

「……え? 電話? 誰だろ……? わたし……電話するような男子……いないよ?」

 恥ずかしそうに、昨日の会話を完全に覚えていない様子のユア。その表情は、本当に何も知らないように見えた。俺は、半ば諦めながらも、ユアのスマホの音声通話の履歴を見せてもらった。

 すると、そこには確かに昨日、ユアが電話をかけた形跡が残っていた。それを見たユアは、みるみるうちに顔を真っ赤に染めていく。その頬は、リンゴのように赤く、熱くなっていた。

 ユアのスマホの画面に表示された通話履歴を見て、俺はホッとした。これで、昨夜の出来事が夢ではなかったことが証明されたのだ。

「わぁー!? わたし……電話してる!?」

 ユアは、信じられない、というように声を上げた。そんな彼女に、俺は昨夜の出来事を少し意地悪く思い出させた。

「それ、昨日……俺とイチャイチャしてる時に掛けてくれたんだけど……?」

「……え? えぇぇ!?」

 ユアは、驚きのあまり固まってしまった。その様子が可愛くて、俺はさらに言葉を続けた。

「ユアに仲の良い男子ができたっていうから……俺とどっちが好きなんだって……。俺が妬いちゃってさ」

 俺の言葉に、ユアは再び顔を真っ赤に染め、恥ずかしそうに視線を逸らした。

「……そっか。うん……そりゃ……お兄ちゃんかな」

 蚊の鳴くような小さな声で呟いたユアは、その言葉を口にして、何か納得したような表情を浮かべた。俺は、その言葉と表情に、言いようのない幸福感で満たされた。

「覚えてないのか?」

 俺の問いに、ユアは首を傾げた後、恥ずかしそうに頬を染めた。

「うぅーん……なんとなく……でも、キュンとしちゃった♪ ね、ね……キス……したんだよね? じゃ、もう……がまんしなくても良いんだ?」

 俺が返事を返す前に、ユアは飛びついてきた。俺の胸に顔をうずめ、そのまま唇を俺の唇に重ねてくる。昨夜の激しいキスとは違う、朝の光の中での、甘く、そしてどこか初々しいキスだった。

 両親が共働きで朝早く出かけてしまうため、俺とユアが普通に会話をしたり、イチャイチャしていても問題はなかった。俺は、しばらくユアと昨日を思い出しながら、舌を絡め合った。しかし、ユアはどこかぎこちなく、その初々しさに羞恥心が混ざり合い、それがまた俺にはエロく感じられた。

「お兄ーちゃん……すきぃ……」

 ユアは、甘く蕩けた声でそう囁いた。その声に、俺の身体はさらに熱くなるのを感じた。

「続きは、帰ってからな」

 俺がそう言うと、ユアは目を丸くして固まった。そして、戸惑いながら、俺に問いかける。

「へ? つづきってぇ……? え? わたし……キスの先も!?」

 なんてことだ。この展開は、二度も興奮するシチュエーションでエッチができるということか? いや、もしかしたら三度目もあるかもしれない。それはそれで、さすがに飽きてしまうな。

 だとすると、昨日のユナちゃんとの出来事もなかったことになっているのか? そう考えると、それはそれで少し残念かもしれない。あんなシチュエーションなんて、そう何度も起きるものではないだろうし、俺の気持ちは少し複雑だった。

 あの出来事をクラスの人気者のユナちゃんに確認をするなんてできない。「昨日、俺……抱きついたっけ?」などと聞けるわけがない。

「ま、忘れてるなら……帰ってから思い出せばいいだろ。遅刻するぞ?」

 俺がそう言うと、顔を真っ赤にさせていたユアは、ハッと我に返った。慌てて時計を見ると、もう家を出る時間になっていた。

「わ、わわわっ! 遅刻しちゃうー!」

 ユアは、慌てて朝食をかきこみ、パンを口にくわえながら、制服を着るために部屋へと走っていった。その焦った背中を見ながら、俺は一人、静かに笑みを浮かべた。帰ってから、ユアにじっくりと思い出させてやる。そんな、甘い計画を立てながら。

 学校に着き、授業中もずっと、昨日のことを思い返していた。

 昨日の午前中は普通だった。いつもと何も変わらず、友人と話したり、ふざけ合ったりしていた。しかし、昼休みに屋上へ続く階段から落ちてから……明らかに様子がおかしくなった気がする。まるで、俺の周りでご褒美イベントが次々と起こり始めたのだ。それは、まるで俺に変な能力が、徐々に目覚めたかのように感じられた。

 体育の時間が終わり、そのまま昼食の時間となった。いつもなら教室で友達と弁当を食べるのだが、俺は、この原因となった場所、屋上へと続く階段の踊り場に再び来ていた。

 とはいえ、原因など分かるわけもなく、ただ一人で弁当を食べるだけになってしまっていた。あたりを見回し、首を傾げ、ため息をつくのを繰り返す。本当に、あの階段で滑って転んだだけで、こんな不思議なことが起こるものなのか。

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